ブハラ近郊のカガンのエミール宮殿
開館時間: 9時00分~17時00分、土曜日9時00分~14時00分
休館: 日曜日
ブハラに列車で到着した際は、駅近くに位置するカガンの19世紀に建てられたブハラエミールの宮殿をぜひ訪れてください。この宮殿は道路からは見えにくいため、観光客が見過ごしてしまうことがありますが、独特の建築様式と興味深い歴史を持つ、魅力的な場所です。ウズベキスタンの重要な建築遺産の一つとして認識されています。
この宮殿の建設の背景には、19世紀後半にロシア帝国が中央アジアへ勢力を拡大していった時期がありました。世紀末には、ロシアとブハラ・ハン国の間に強固な外交関係が築かれ、鉄道網の発展も進みました。ブハラから12キロ離れたタシケントへの鉄道沿線には新たに「新ブハラ」の集落が形成され、ここはロシア軍や技術者、建設労働者の拠点となりました。この地域は外交活動の中心地ともなり、ブハラ・ハン国内におけるロシア帝国の代表的な機関が設置されていました。
写真提供:ショディヤベギム・バフティヨルゾダ
1895年、ブハラエミールのサイード・アブドゥラハド・ハーンは新ブハラに新たな宮殿の建設を命じました。一説には、エミールがロシア人居留地に自らの宮殿を持つことを望んだためとされています。また別の説では、宮殿はロシア皇帝ニコライ2世の訪問に備えて建てられたとも言われています。ただし、エミールはこの宮殿に住むことはなく、ニコライ2世の訪問も実現しませんでした。
この宮殿の建設は、長年中央アジアで活躍した建築家アレクセイ・ベノワの指揮のもと、1895年8月14日に開始されました。ベノワはアルマトイ、タシケント、サマルカンドにも多くの建築物を手掛けており、タシケント中心部にあるロマノフ公爵の宮殿は彼の代表作の一つとして現存しています。建築史の専門家たちは、カガンのブハラエミールの宮殿をベノワの最高傑作と評価しています。
宮殿の建築様式は折衷的で、アラビア風のモチーフに加え、バロック、帝政、ネオモーリタニア様式の要素が取り入れられています。外装にはブハラ特有のガンチ(石膏)彫刻が施されています。内装は現存する部分が少ないものの、当時の建築技術と地元職人の高度な技が反映されています。
1898年に宮殿は完成しましたが、長い間活用されることはありませんでした。1910年にサイード・アブドゥラハド・ハーンの息子、サイード・アリム・ハーンがブハラのエミールとなり、宮殿を高官の宿泊施設とする決定が下されました。その後、ソビエト時代には宮殿は国有化され、鉄道労働者文化宮殿として利用されました。現在、宮殿は定期的に外装のメンテナンスが行われていますが、全体的な改修が必要な状態にあります。