カン・テングリ、カザフスタン
「空の王」として知られるカン・テングリは、ティエンシャン山脈の最高峰の一つで、カザフスタンとキルギスの国境に位置し、標高7,000メートルに達します。何千年もの間、この山は古代トルコ人にとって神聖な存在であり、今でも多くの伝説や信仰と結びついています。別名「カンタウ」(血の山)とも呼ばれ、これはピークを覆うピンク色の花崗岩に由来します。日没時には赤みを帯びます。
イスラム教を受け入れる前のトルコ・モンゴル部族は、テングリズムという異教を信仰していました。この宗教の最高神はテングリ神であり、人間の運命と寿命を決定すると信じられていました。古代トルコ人は、彼らの最高神が世界の頂上にのみ住むことができると考えていました。そして、その頂上がカン・テングリだったのです。
カン・テングリ峰は多くの旅行者の記録に記されていますが、最初に探検したのは19世紀のロシアの著名な地理学者P.P.セミョーノフ・ティエンシャンスキーです。彼はこの峰を、規則正しいピラミッド型のアイキュイルとして描写しました。多くの現代の登山家によると、カン・テングリはそのほぼ完璧な幾何学的形状により、世界で最も美しい山峰とされています。
カン・テングリの初登頂は1931年にミハイル・ポグレビツキー、ボリス・チュリン、フランツ・ザウバーによって達成されました。ポグレビツキーはその回想録の中で、カン・テングリの夕焼けを次のように記しています。「…カン・テングリは、暗いターコイズ色の空に嵌め込まれた巨大な多面体のルビーのように輝いていました…」
現在、世界中の登山家たちはカザフスタンの北エニルチェク氷河とキルギスの南エニルチェク氷河にある訓練キャンプに集まり、カン・テングリの登頂のために訓練を行っています。これまでに25の登山ルートが開設されています。
カン・テングリ峰は、世界でも最もアクセスが難しい山の一つと考えられています。その壮麗さと厳しい特徴から、古代トルコ人がこの山を「空の王」と呼んだのは決して無理ではありません。その厳格な壮大さと困難さにおいて、カン・テングリは有名な8,000メートル級のヒマラヤ山脈に匹敵し、世界中の登山家にとって勇気と技術を試す道となっているのです。