カザフスタンの馬術競技

カザフ文化の基盤である遊牧民の暮らしにおいて、馬上での技術は不可欠です。何千年にもわたる社会の発展の中で、カザフの人々は競い合い、楽しむだけでなく、馬上での力、敏捷性、器用さを鍛えるために馬術競技を発展させてきました。これらの競技の中には、古くからの生存技術に由来するものもあれば、祝祭の際に楽しむためのものもあります。しかし、どの競技もカザフ民族の精神的な結束と仲間意識を育む役割を果たしています。カザフの人々は、定住生活が進む中でもこれらの競技を守り続けてきました。現代においても、大きな祝祭に馬術競技は欠かせない存在となっています。

アラマン・バイガ

アラマン・バイガは、地元の馬種による長距離レースとして知られています。遊牧文化では長旅に備える必要があり、そのため卓越した持久力を持つ強靭な馬が育成されてきました。アラマン・バイガでは、30km、50km、さらには100kmもの険しい地形を駆け抜けることで、地元の馬の能力が試されます。騎手は馬の尻尾やたてがみを編んだり、鳥の羽や装飾品を付けたりして馬を守りましたが、それでもすべての馬が完走できるわけではありませんでした。現代では、この競技はカザフ人の間で依然として人気があり、競馬場で30kmのレースが開催されています。

バイガ

短距離レースは「バイガ」と呼ばれます。バイガは平坦な地形で行われ、距離は2km、5km、9kmのいずれかです。馬の年齢ごとにカテゴリーが分かれており、3歳未満の馬は最大2km、4歳未満の馬は最大5km、5歳以上の馬は最長9kmの距離を走ります。バイガは多くの祝祭で開催され、馬を持っている人なら誰でも参加可能です。

コクパル

古代から続くコクパル（チーム戦は「ウラク」）は、カザフスタンのみならず中央アジア諸国の文化の一部となっています。この競技の目的は、羊の死骸（かつては羊ではなく狼）を持ち上げ、決められた地点まで運ぶか、大きな釜の中に投げ入れることです。騎手は、地面に身を乗り出しながら羊をつかむため、強い握力と馬上でのバランス感覚が求められます。「コクパル」という名前はカザフ語で「青い狼」を意味し、その由来には次のような伝説があります。かつて遊牧民は冬の間、狼を狩る習慣があり、帰還後にその死骸を奪い合って遊んでいました。この狩猟習慣が次第に競技へと発展し、狼の代わりに羊が使われるようになり、祝祭の際に行われるようになりました。現代では、この競技はカザフスタン、ウズベキスタン、キルギスなどの公式馬術スポーツとされており、最大のコクパル選手権はキルギスで開催される「遊牧民競技大会」の一環として行われます。

アウダリスパク

アウダリスパクは、カザフ伝統の騎馬相撲です。騎手同士が馬上でつかみ合い、相手を馬から落とすことを競います。この競技は戦士の訓練にも適しており、馬上での格闘技術だけでなく、強い握力を鍛えるのに役立ちます。かつてはこの競技が必修とされ、子どもたちは幼い頃から子馬や羊、牛の上で練習していました。また、最も強く機敏な馬を見極める専門家も存在しました。

クズクウ

カザフスタンやキルギスの祝祭で行われる「クズクウ」は、カザフ語で「少女を追いかける」という意味の楽しい競技です。若い男女が華やかな民族衣装をまとい、馬を装飾しながら参加し、観客に鮮やかなショーを提供します。競技が始まると、最初に少女が馬で駆け出し、数秒後に少年が追いかけます。少年がゴールまでに少女にキスできれば勝ちですが、できなかった場合、少女が今度は少年を追いかけ、ムチで打つ権利を得ます。このレースの距離は通常、片道400～500メートルです。

クメアル

カザフ語で「コインを拾う」という意味を持つこの競技では、騎手ができるだけ多くのコインを拾うことを競います。コインは小さなスカーフに包まれ、一列に並べられます。騎手は馬上から身を乗り出してコインを拾い上げ、最も多くのコインを集めた者が勝者となります。この競技では、優れた敏捷性、バランス感覚、強い握力が求められます。

ティマク・ウルプ・ジュグ

ティマク・ウルプ・ジュグは、誰でも参加できる楽しい競技です。高さ2メートル強の柱が設置され、その上に「ティマク」と呼ばれる帽子が置かれます。参加者は帽子を見つめた後、目隠しをされ、ムチを持たされて馬に乗せられます。何度か回転した後、ムチを使って帽子を落とすことを試みます。3回の挑戦が許され、失敗した場合は、歌を歌ったり踊ったりすることで追加の挑戦権を得ることができます。この競技は、大きな祝祭の際によく行われます。