ダルヴァザ・ガスクレーター へのグループツアー (ヒヴァから)

キルギスの織物

キルギスの織物

キルギスの織物には、主に自然をモチーフにしたデザインが取り入れられ、山岳地帯やその周辺で容易に手に入る素材が使用されています。 主な素材としては、フェルトやウール、葦、刺繍糸などが一般的です。 その模様やデザインには、キルギスの山々、川、植物、動物などの自然が反映されています。

「シルダック」は、キルギスの最も象徴的な織物のひとつで、その大胆な模様によってすぐに見分けることができます。シルダックは、2枚のフェルトを縫い合わせた後にカットして作られ、左右対称のデザインと2色のメインカラーが特徴です。 手作業で作られるシルダックは完成までに数週間を要するため、近年では機械で製作されたものが安価に流通しています。シルダックの耐久性は、使用環境(壁に飾るか、床に敷くか)によって異なり、数年から数十年にわたって使用できます。 デザインには羊、ヤギ、犬、花などが描かれることが多く、抽象的な模様も見られます。

「トゥシュ・キイズ」は、非常に精巧な刺繍が施された布で、主に結婚の際に作られることが多い伝統的な織物です。柔らかい布地に植物や花、時には動物のモチーフが刺繍され、ユルト(遊牧民の移動式住居)の壁に掛けられます。 また、結婚したカップルの名前や、トゥシュ・キイズが作られた年が記されることもあります。近年では、これらの大きな刺繍作品の一部を切り取り、枕カバー、バッグ、テーブルクロスなどの装飾品に加工することも増えています。複雑なステッチと優雅なデザインが特徴のトゥシュ・キズは、中央アジアでも特に美しい伝統織物のひとつとされています。

キルギスの織物
キルギスの織物
キルギスの織物

「クラック」とは、布の切れ端を縫い合わせて作られた織物製品のことを指します。 「クラック」という名称は、「縫い合わせる」「別々の部分をまとめる」という意味のキルギス語「クラ」に由来しています。クラックは、帽子、子供服、ゆりかごの毛布、結婚式のカーテン、マットレス、枕、鞍のカバー、バッグ、カーペットなど、さまざまな用途に用いられてきました。 伝統的に、布の切れ端には魔除けの力があると信じられ、特別な意味を持つアイテムに使われることが多かったとされています。その代表例が「キルク・コイノック」と呼ばれるシャツです。これは40人の異なる近隣住民から提供された布の切れ端で作られ、生後40日目の赤ちゃんのために縫われます。 特に、黒と白の布の切れ端が最も価値が高いとされ、ラクダの目、鶴、お守り、星などの幾何学模様を作る際に用いられます。

「アラ・キイズ」はフェルトを用いた織物で、「シルダック」と似たデザインが特徴ですが、製作工程が異なります。シルダックは大きなフェルトシートを切り取ってデザインを作るのに対し、アラ・キイズは小さなフェルト片を重ね合わせ、カーペット全体を形作ります。 その後、このカーペットを温水に浸し、圧縮しながら層を結合させることで完成させます。この製法により、デザインの境界線が厳密に定まらず、色や模様が自然に溶け合い、一体感のある美しい仕上がりになります。 シルダックに比べると頑丈さや耐久性はやや劣るものの、アラ・キイズのデザインはより複雑で、カラフルなものが多いのが特徴です。

「チイ」は、草原に自生する葦を収穫・乾燥させて作られるマットです。無地のものもあれば、模様が施されたものもあり、用途に応じてさまざまなデザインがあります。チイは、ユルト(遊牧民の移動式住居)の断熱材として使用されるほか、湿気を防ぐためにカーペットの下に敷かれることもあります。 また、シルダックやアラ・キイズを作る際のフェルト加工の工程でも重要な役割を果たします。