キルギスの自然
キルギスの自然環境は、この国を訪れる大きな魅力の一つです。国土のおよそ94%が山岳地帯であるため、トレッキングやハイキングなどのアウトドア活動に加え、豊かな自然の中でゆったり過ごす機会に恵まれています。訪れる人々は、広大な渓谷から壮大な氷河に至るまで、中央アジア特有の多様な景観と環境を体験できます。
キルギスは天山山脈に覆われ、この山脈が国土を北部と南部に分けています。国内で最も人口密度が高いのは、北部のチュイ渓谷や南部のフェルガナ盆地など、山間部に囲まれた広い谷です。これらの地域には、首都ビシュケクや南部最大の都市オシがあり、国内の農業活動の多くがここに集中しています。また、都市部から少し足を延ばせば、雄大な山々や自然保護区、湖、そして風光明媚な道路が広がっており、美しい景色がすぐ身近に感じられます。
「中央アジアの真珠」と称されるイシク・クル湖は、世界で2番目に大きい高山湖として知られています。北岸にはリゾート施設や公共ビーチが集中しており、南岸は豊かな自然と美しい渓谷で名高いエリアです。イシク・クル州最大の都市であるカラコルは、有名な氷河や周囲の山岳地帯へ向かうトレッキングの拠点となっています。また、カラコルからは、ジェティ・オグズをはじめとする印象的な赤い砂岩の景観を楽しむこともできます。
天山山脈は、急流が流れ込む深い峡谷、険しい岩山、小規模な森林、そして広大な高原の牧草地が共存するひとつの生態系を形成しています。夏になると、これらの高地草原には半遊牧民が移動式住居(ユルト)を設営し、家畜を放牧します。多くの山々の間には湖が点在しており、中には氷河が溶ける季節にだけ出現するものもあります。ソン・クル湖は、こうした山岳湖の中でも特に有名で、標高約3,000メートル(約10,000フィート)の高さにあり、夏期のみアクセスが可能です。その雄大な自然環境は、多くの人々に愛されています。中国との国境付近には、天山山脈の最高峰であるポベダ峰(7,439メートル/24,406フィート)がそびえています。その近くに位置するハン・テングリの標高は、山頂を覆う氷冠の有無によって異なりますが、約7,000メートル(23,000フィート)前後とされています。
高山地帯には多様な動物が生息しています。ワシ、タカ、ハヤブサなどの猛禽類は比較的よく見られる一方、希少なマルコポーロ羊(巨大な湾曲した角が特徴)や、目立たない生活を送るため発見が難しいユキヒョウも存在します。キルギスは、世界ユキヒョウ・フォーラムを主催するなど、独自の生態系とそこに暮らす動物を保護するため、国際的な保護活動に積極的に取り組んでいます。ユキヒョウはビシュケクのシンボルとされ、中央アジア全域に生息しています。
キルギス南部では、多くの人々が肥沃な大地で知られるフェルガナ盆地の低地に暮らしています。この豊かな土地は、人口増加や農業の拡大を支えており、盆地内にはキルギス第2の都市であるオシが位置しています。フェルガナ盆地は、果物や野菜の生産で名高く、夏には畑一面にヒマワリが咲き誇り、村々をいっそう美しく彩ります。また、ジャラル・アバド州のアルスランボブには世界最大級の天然クルミ林があり、クルミの木の数や品種の多さで知られています。
キルギスの自然は、タジキスタンや中国にまたがるパミール高原にも広がっています。タジキスタン国境付近には、標高7,134メートル(23,406フィート)のレーニン峰がそびえ立ちます。レーニン峰は世界で最も登りやすい7,000メートル級の山の一つとして、登山家たちに人気があります。