ウスチュルト台地、ウズベキスタン
ウスチュルト台地は、ウズベキスタン、カザフスタン、トルクメニスタンにまたがる広さ20万平方キロメートル以上に及ぶ古代の地質構造です。この台地は広大で平坦な半砂漠地帯ですが、数百万年にわたり古代の海の底で圧縮された石灰岩や白亜の層から成る、100メートルの高さの断崖や壁に囲まれているのが特徴です。これらの断崖は、水や風、長い年月によって独特の形状を持つようになりました。
ウズベキスタン側のウスチュルト台地は、アラル海に隣接し、北から南まで続く断崖「チンク」が目立つ特徴です。カザフスタンの台地には、これらの断崖だけでなく、激しい浸食によって複雑な形に形成された孤立した山々も含まれます。トルクメニスタンのウスチュルト台地の南部は、より小さく、直線的な断崖や国境付近の地域で構成されていますが、観光客が訪れることはほとんどありません。
このガイドでは、ウズベキスタンのウスチュルト台地に焦点を当て、カザフスタンの地域への参考情報も提供しています。
ウスチュルト台地のツアー
ウズベキスタンのウスチュルト台地への旅は、通常、国際空港のあるヌクスから始まります。現地に精通した運転手付きのジープを手配することができ、多くの場合、アラル海へのツアーの一環として訪問されます。ヌクスを出発した後、観光客はまずムイナクを訪れ、かつての「船の墓場」を見学し、その後、かつての海底を通って台地へ向かい、断崖の一部にあるパオキャンプで夜を過ごします。帰路では、ルートを変えて、スドチエ湖を望むウルガの廃村近くの断崖を訪れることもできます。
早朝にヌクスを出発すれば、ウスチュルト台地を1日で訪れることも可能です。しかし、2日間のツアーを計画してパオで一夜を過ごし、アラル海の日の出を楽しむ方がより充実した体験となるでしょう。さらに1日を追加し、予備の燃料を持参することで、台地を北上し、より険しい断崖や岩を探索することも可能です。
ウスチュルト台地の歴史
ウスチュルト台地の正確な形成年代は明確ではありませんが、科学者たちは約2,000万年から6,000万年前に遡ると推定しています。しかし、この大地がかつて古代のテチス海の一部であり、その後はサルマティア海やアクチャギュリア海に属していたことは間違いありません。現在でも、ウスチュルトの多くの場所で先史時代のサメの歯が発見されます。これは、新たに浸食された崖が古代の地層を露出させているためです。
歴史を通じて、ウスチュルト台地は人類にとって居住困難な場所でしたが、紀元前6千年紀から紀元前3千年紀には、ケルテミナール文化（新石器時代の定住漁民）に属する人々がアラル海の沿岸付近に居住していたことが知られています。シルクロードが繁栄した時代、ウスチュルト台地は広大な砂漠地帯であり、数百キロにわたって目印も水源もない危険な場所とされていました。キャラバンは通常、ウズボイ川の川床に沿って南へ進むか、アラル海の北側を迂回して台地を避けていました。現在、ウズベキスタンにはクルガンチャ・カラ要塞の遺跡と、ウルガ岬にある灯台の基礎という、当時を物語る2つの遺構が残っています。
ウスチュルト台地を横断する最初の恒久的な道路は20世紀半ばに建設され、クングラート・ベイネウ鉄道が1972年にようやく敷設されました。現在、この大地は経済的な価値は大きくありませんが、観光業が発展しており、ウズベキスタンのアラル海沿岸にあるウスチュルトの峡谷や、カザフスタンのマンギスタウ地方の美しい風景が観光客に人気を集めています。
ウスチュルト台地の観光スポット
アラル海を訪れる伝統的なジープツアーでは、観光客は通常、ウズベキスタンのウスチュルト台地にある主要な観光スポットをほぼすべて巡ります。
クルガンチャ・カラ – カルガンシカラやダヴレト・ギレイとも呼ばれる13世紀の要塞で、アラル海沿岸のキャラバンルートの要所として機能していました。現在、この近辺には観光客向けのパオキャンプが設置されています。
クブラ・ウスチュルト – 1964年にガスパイプラインのルート沿いに建設された集落です。現在でも数百人が暮らしており、ラクダの飼育が行われ、本物のラクダミルクが販売されています。
ウルガ – スドチエ湖を見渡す岬に廃墟となった集落と灯台の跡があり、かつてはロシア人の漁業入植者が住んでいましたが、村は徐々に放棄されました。それでも現在、漁師たちが訪れることがあります。
バルサケルメス – 1,000平方キロメートルに及ぶ塩沼で、現在では塩の採取が行われています。ヌクス市から約200キロの距離にあります。
カザフスタン側のウスチュルト
ウスチュルト台地のカザフスタン側にも観光スポットがあり、これらはすべてマンギスタウ地方に位置しています。ウズベキスタン側と同様にアドベンチャーツーリズムの人気スポットですが、独特の自然景観も楽しめます。カザフスタン側の観光スポットは次の通りです。
トゥズバイル – 白い断崖が美しい台地の麓に広がる塩沼です。
ベケト・アタ – カザフスタンの有名なスーフィーによって18世紀に建てられたモスクです。
ボジラ – ウスチュルトの断崖を見渡せる素晴らしい展望台があります。
ウズベキスタンのウスチュルト台地からカザフスタン側へ移動する際には、以下の3つの方法がありますが、いずれも特に快適とは言えません。
車の場合はヌクス・ベイネウ・アクタウのルートを経由して移動します。全長980キロで、一部険しい道路もあり、陸路での国境通過を含めて移動には約12～15時間かかります。
飛行機の場合はヌクス・タシケント、タシケント・アルマトイ、アルマトイ・アクタウの3便を利用します。合計3,600キロの移動となり、乗り継ぎが順調であれば丸一日かかります。
鉄道の場合は2024年8月に運行開始したヌクスからアクタウ（マンギスタウ）への列車を利用します。週に3回運行しており、所要時間は約21時間です。
ウスチュルト台地へのアクセス方法
ウスチュルト台地を訪れるには、ジープなどの四輪駆動車が必要です。多くの旅行者はまずヌクス市に到着し、そこからオフロード車で台地に向かいます。最初に約200キロの舗装された道路を通ってムイナクの旧港へ向かい、その後、アラル海の干上がった湖底を横断する未舗装道路を約80キロ進みます。そこからは台地の麓に沿って北へ進むか、急斜面を登って台地の尾根を走り、素晴らしいパノラマを楽しむことができます。
ヌクスは、ウスチュルト台地へのツアーの出発点となっており、ヒヴァから約190キロ離れています。ヌクスへは車、列車、または飛行機でアクセス可能で、タシケントからは毎日定期便が運航しています。
ウスチュルト台地での安全性
ウスチュルト台地への旅行には、砂漠地帯を旅する際の一般的な安全対策に従うことが不可欠です。単独での冒険はお勧めできません。高原には急な坂道や凹凸があり、車両が砂漠の小動物の巣穴や崩れやすい地面に落ち込む可能性があります。また、アラル海の岸辺に近づきすぎると、泥に足を取られる危険性もあります。さらに、オンラインで提供されている古いGPSトラックを使用すると、現在では崩壊した道路や危険な坂道に繋がる場合があります。そのため、アラルクム砂漠やウスチュルト台地を熟知しており、不測の事態に対応できる現地の運転手に依頼するのが賢明です。
また、台地の崖はもろい石灰岩で構成されており、一部は張り出した岩棚になっているため、崖の端に近づきすぎないよう十分に注意することが重要です。
ウスチュルト台地の訪問に適した時期
ウスチュルト台地は乾燥した砂漠気候で、降水量は非常に少ない地域です。夏は長く、気温は日中に40度を超えることがよくあります。冬は雪がほとんど降らないものの、寒さと強風があり、快適とは言えません。そのため、ウスチュルト台地を訪れるのに最適な時期は、気温が比較的穏やかな4月、5月、9月、または10月です。